法人版事業承継税制は、中小企業のオーナーが後継者に自社株を贈与・相続する際、贈与税・相続税の納税を猶予できる制度です。特に2018年に導入された「特例措置」では、一定の条件を満たすことで贈与税・相続税の全額(100%)が猶予され、最終的に免除される可能性もあります。
■主な要件
制度適用には以下の要件を満たす必要があります。
・中小企業(非上場)であること
・先代経営者が代表権を有し、株式の過半数を保有していたこと
・後継者が株式を承継し、会社の代表者に就任すること
・事業を継続し、後継者が株式を継続保有すること
・承継後5年間、雇用の8割維持に努めること(未達でも直ちに取消とはなりません)
■期限に注意
特例措置は時限制度であり、以下の期限に注意が必要です。
・2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出・確認を受けること
・該当株式の贈与・相続等が2027年12月31日までであること
・贈与税・相続税申告期限の2ヶ月前までに都道府県知事への認定申請を行うこと
・贈与税・相続税申告時に、猶予申請の書類をあわせて税務署へ提出すること
※特例承継計画を提出しても、実際に承継を行わなくても構いません。適用の可能性がある場合は「まずは提出だけしておく」ことを推奨します。
■メリット
・要件を継続して満たす限り、贈与税・相続税が猶予される
・将来的に株価が上昇しても、猶予税額は承継時の株式評価額で固定される
・要件を適切に満たすことで「猶予された税額」が全額免除される可能性がある
■注意点
・制度適用後は要件を満たし続ける必要があり、逸脱すると猶予税額の一括納付が必要となる
・承継後5年間は毎年、税務署や都道府県への報告義務あり(税務署は6年目以降3年ごと)
・贈与者(先代経営者)が死亡した場合、該当株式の贈与税は免除されるが、相続財産に合算され相続税の課税対象となる(相続税の猶予適用には、別途要件を満たし認定手続きが必要)
■制度を検討すべき方
・自社株評価が高く、贈与税・相続税の負担が大きい見込みの方
・後継者が決まっており、代表交代を数年以内に検討している方
本制度は非常に複雑で、他にも多数の要件が存在します。SGAは制度適用に不可欠な認定支援機関です。
適用を検討されている場合や不明点がある方は是非弊所までご相談ください。