昨今の寿司ブームは世界に広がっています。
欧米はもちろんのこと、東南アジアや中東でも寿司店が急増しているようです。これは健康志向(ヘルシー・高タンパク・低脂質)と相まって、このブームは続くと思います。国内では高級江戸前寿司と回転寿司に2極化していて、いわゆる町のお寿司屋さんは店主の高齢化とともに静かに店を閉めています。
高級寿司店は今や「おまかせ」が主流。回転寿司は回転しない店が増えています(笑)。「おまかせ」だとネタの品揃えと廃棄ロスが減少でき、店側から見ればとてもリーズナブル。
カウンターに座って、お好みで鮨を握ってもらう。若者の夢であり大人になった証のように感じていました。それが今だと黙って出されたものを食す。どうせ「お勧めは?」なんて通ぶって聞くだけだから似たようなものだけど、ちょっと味気ないかな…。
ということで寿司職人は引く手あまた。海外へ渡って一旗揚げることも夢じゃない時代です。何とかアカデミーは約6ケ月で寿司職人を促成するそうです。一方、銀座の久兵衛さんでは職人が板前としてお客の前にださせてもらうのに10年かかるそうです。ほとんどが堪えられずその前に辞めてしまう。だから久兵衛の板前さんは年配者が多いのです(笑)。
A君はそのアカデミーから3年前に某寿司店に就職しました。そのお店の大将は某ホテルの寿司店で長年料理長を務めていた大ベテランです。大将は包丁の研ぎ方から始めて手取り足取りA君を指導しました。板前のそばにつかせ、お客とのやりとりも学ばせました。お互いの努力が実り最近やっとA君はカウンターに一人で立つ機会を与えられるようになりました。
その矢先、A君は大将に退職を申し出ました。実際のところは不明ですが、表向きの理由は環境を変えたいということでした。料理人が技術を学ぶ為、何年か毎に店を移るということはよく聞く話で、あの寿司店で働いてみたい、あの寿司職人の技術を学びたいとうのであれば多少理解はできますが、それでもなさそうな…。
授業料を支払って専門学校で基礎的なものを学ぶ。一方、店では給料をもらって実践的なものを教わる。だからこそ、ここまで育ててくれた大将のお店にお礼奉行とはいわないまでも、わずかでも恩返しをしてから辞める。今や職業選択・職場選択の自由が憲法や法律で定められているとはいえ、いつの時代にあっても残っていてほしい人の倫だと思います。
このことはA君一人の話ではなく、どこの業界においてもある話。
ヘッドハンティングや転職を勧めるテレビCMを観るにつけ、引き抜かれる側の会社のことも考えろよとイラッとしてしまう私はやはり古い人間でしょうか。

























